Kokushokankokai Corporation Ltd.

Possessed : 国書刊行会
Exorcist: Kenji Sato (ex BUTCHER ABC)


1 : バベルの図書館

20世紀文学の巨人ボルヘスによって編纂された幻想文学アンソロジー。
該博な文学知識にもとづいて古今東西から選りすぐられた珠玉の物語たちが織りなす全30巻の幻想タペストリーであり、おれが国書刊行会の出版物に取り憑かれるきっかけになったシリーズである。
高校生のころ、クラスメイトが読んでいるのを見て以来、縦長の珍しい判型と瀟洒な装丁にすっかり魅せられた。
神保町の古本屋を巡って少しつづ買い揃えていたが、見つからない巻が多く、高校生だったこともあり資力的にも限界があった。
結局、コンプリートまでに5年以上の月日を要してしまった。

2 : 真・ク・リトル・リトル神話体系

屈折した青春をおくる者は、遅かれ早かれクトゥルフ神話に辿り着くものだが、おれもそのような人間の一人だった。
入手も容易で安価な青心社の文庫版で満足していたときはまだよかった。厳めしい外箱に収められたこのシリーズを蒐め始めるころには色々な意味で取り返しのつかない人間になってしまっていた。
教室の隅で暗黒神話を紐解いては怪しげな呪文を呟いたり、旧支配者の影に怯えて震えたり、宇宙的恐怖に戦慄しては金切り声を上げるなどの奇行が目立ち始め、友人の数は著しく減少。挙げ句の果てに、佐藤とかいう糞が奇声を発したり廊下やベランダを走り回っていてウザいという苦情が複数の生徒から教師のもとに寄せられ、頻繁に呼び出しを受けるようになった。
悲しい話ですね。

3 : アレイスタークロウリー著作集 

20世紀最大の魔術師クロウリーの著作集である。
この本との出会いは中学生のころに遡る。近所にある小さな古書店の雑然とした書架の片隅で一際異彩を放っていた。多感な時期にあった少年の心は、H・R・ギーガーによる禍々しい装画によって鷲掴みにされてしまった。
中学生には手が届かない値段であったので購入は諦めたが、当時の衝撃が忘れられず、20代半ばになってから苦労して全巻を揃えた。
現在、おれの右腕にはギーガーの絵を基にした刺青が施されているが、本書との鮮烈な出会いを経験していなければこの刺青もなかったかもしれない。
おれにとってこの本は書籍というよりも美術品に近い扱いなので、はっきりいって内容はロクに読んでいない。書棚に並べて悦に入る、それだけで充分である。

4 : アーカムハウス叢書

H・P・ラヴクラフトの作品群を「クトゥルフ神話」として体系化したコズミックホラー界の大立役者オーガスト・ダーレス。彼が設立した出版社「アーカムハウス」から出版された作品を集めたシリーズである。
両親から支給された通学定期の購入代金をこのシリーズを買うために使い込んでしまい、物理的な意味での登校困難児になってしまった。学校に行くふりをして家を出てはゲームセンターに入り浸り、拾い集めたメダルでポーカーや花札にのめり込むなど破滅的なライフスタイルを確立。以降、破竹の勢いでドロップアウト街道を爆進することになるが、それはまた別のおはなし。

5 : ウィアード・テールズ傑作選

ウィアード・テールズとは1923年から1954年まで発刊されたアメリカのパルプマガジンである。パルプマガジンとは質の悪い紙に印刷された低俗で安っぽい雑誌の総称で、日本でいえば「猟奇」や「奇譚クラブ」などのカストリ雑誌みたいな物だと思う。
ウィアード・テールズはラヴクラフトをはじめC・A・スミス、ロバート・E・ハワード、ロバート・ブロックなど、今から考えると錚々たるメンツが寄稿しており、当時絶大な人気を誇ったのも肯ける。表紙や挿絵もB級全開のカッコいいものが多く、イラストの分野でも重要な人物を多数輩出している。いつかオリジナルの現物を手にとってみたいと常々思っている。そういえば、荒俣宏が全279号をコンプリートしたらしいとの情報が一部の好事家のあいだで話題になったことがある。
『怪物世界―パルプマガジン―恐怖の絵師たち』も併せてどうぞ。

6 : ドラキュラ叢書

国書刊行会にしては安価なシリーズだったので手を出し易かった。初めに買ったのは第5巻の『ク・リトル・リトル神話集』で、編者は荒俣宏だった。
”Cthulhu”の発音や表記には諸説あるが、もっとも人口に膾炙しいていると思われる”クトゥルフ”や”クトゥルー”ではなく、ドナルド=ワンドレイが提唱する”ク・リトル・リトル”に拘る姿勢が面白い。しかしながら、このクリトリス然とした語感がどうしても好きになれなかった。
他にはブラム・ストーカーの『ドラキュラの客』、W・H・ホジスンの『幽霊狩人カーナッキ』、後述する『黒魔団』などツボを抑えたラインナップ。
2巻以降にはトランシルヴァニア通信という粋な月報が付属していた。

6.66 : デニス・ホイートリー 黒魔術小説傑作選

『黒魔団』、『悪魔主義者―サタニスト』、『ナチス黒魔団』など、とにかくいかがわしいタイトルと妖しい装画に惹かれて購入した。『黒魔団』は”The Devil Rides Out”というタイトルで映画化されている。主演はクリストファー・リーで、邦題はたしか”悪魔の花嫁”だった。ハマー・フィルム怪奇コレクションDVDBOXの人外魔境編に収録されており、お気に入りの一本だったのだが金欠のために売却してしまった。
このころからデスメタルやB級ホラー映画などにも傾倒し始め、家族からは穀潰しのクズとして認識され、犯罪者予備軍のような扱いを受けることになる。そしてその後、実際に複数の犯罪に関与した。